前篩骨神経の電気刺激で潜水反応が起こる

上気道の刺激は通常無呼吸をもたらすが、迷走神経を介した徐脈や交感神経を介した末梢血管抵抗の上昇をもたらすこともある。 この心肺反応はしばしば潜水反応と呼ばれ、通常、鼻腔刺激によって開始される。 本研究の目的は、マスクラット(Ondatra zibethicus)の鼻粘膜を支配する前篩骨神経(AEN)を調べることであった。 AENへの電気刺激(通常50Hz、100μs、500μA)により、潜水反応と同様の即時的かつ持続的な徐脈と呼吸の停止が生じた。 心拍数は264+/-18から121+/-8bpmに有意に低下し、同時に4.2+/-0.9秒の無呼吸が発生した(5秒間の刺激)。 血圧は97.9+/-4.8から91.2+/-6.4mmHgに低下した。 WGA-HRPで標識したAEN三叉神経節細胞の断面積とAENの電子顕微鏡解析から推定すると、AENの約65%は無髄のC線維で構成されていることが明らかになった。 また、鼻腔を支配する神経からの有髄線維の72.4%は小径(<6μm、Adelta線維と推定される)であることがわかった。 このように、マスクラットのAENには小径線維が高濃度(89.8%)に含まれていることがわかった。 以上のことから、マスクラットのAEN内の小径線維を電気的に刺激することにより、潜水反応と同様の心血管系および呼吸器系の反応を引き起こすことができると結論した。