慢性気管支炎の急性増悪における胸部X線所見等の日欧比較

医薬品、特に抗菌薬の開発におけるハーモニゼーションで問題となるのが臨床試験適応症の相違である。 特に欧米で慢性気管支炎の急性増悪(AECB)と診断された患者の基礎疾患が日本の慢性気管支炎と同一であるかどうかは非常に疑問視されてきた。 我々は,欧州で実施されたSB265805(開発中のフルオロキノロン系抗菌薬)の臨床試験に登録されたAECB患者105名の胸部X線フィルムを評価し,その臨床症状および検査データを日本の過去のデータと比較検討した. その結果,105例中5例はAECBの基準を満たさず,肺炎2例,気管支拡張症1例,じん肺1例,気管支拡張症+肺気腫1例と診断された。 残りの100名では、胸部X線所見や検査結果は慢性気管支炎の概念と一致していたが、そのうち23名は他の心疾患や肺疾患も併発していた。 欧米の患者と日本の過去のデータでは、年齢、咳、白血球数、CRP(C-reactive protein)値などの分布に著しいアンバランスがあった。 日本人の過去のデータと比較すると、欧米人患者は、WBCとCRPの増加はあまり顕著ではないが、より若く、より重い咳をしていた。 その他の変数,すなわち性別,発熱,喀痰量については,分布に有意差を認めなかった. 発熱,WBC,CRPで評価した重症度に関しては,両群間に有意差はなかった.